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「サブリース新法」は、2020年6月に制定された「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の呼称です。この法律は、主に①サブリースに関する規制部分と、②賃貸住宅の管理業務に関する規制部分に分けられ、①の部分が2020年12月に施行されました。サブリース事業者が物件の管理も同時に行っている実態も踏まえてのものと考えられますが、①と②の内容は特に直接つながっているわけではないため、「サブリース新法」という呼称は、厳密には①の部分に対応しているともいえます。
①が制定されたのは、主に不動産のオーナーがリスク等を十分に理解せずにサブリース事業を始めてしまう(サブリース事業者との間でマスターリース契約をしてしまう)ことや、マスターリースの契約を解除したい場合に判断を誤って解除ができなくなってしまうことを防ぐためです。その手段として、サブリース事業者等(サブリースの勧誘を行う事業者も一部含みます。)に対する規制が定められることになりました。以下では、国土交通省の定めたガイドラインを踏まえてこの規制の概要を紹介します。
新法には「サブリース」という言葉は規定されておらず、「特定賃貸借契約」というのが適用の対象となる取引です。これは、①住宅の賃貸借契約で、②賃借人が転貸事業を営むことを目的として締結されるもので、③例外的に、親族間や親子会社間などの国交省令で定められる一定の密接な関係にある当事者間でされる契約を除くものとされています。
なお、契約書の題名は直接関係がなく、実際に「特定賃貸借契約」にあたる取引を行っている場合であれば、契約書などの形式面だけを変えて新法の適用を免れようとすることはできないと考えておくべきです。
上記の「特定賃貸借契約」をする賃借人が「特定転貸事業者」として新法の適用対象となります。また、誇大広告等の禁止と、不当な勧誘等の禁止については、特定転貸事業者が勧誘を行わせる者も「勧誘者」として新法の適用対象となります。
サブリース事業者等がサブリース事業の広告をするときは、契約の内容(賃料、物件の維持管理方法、契約解除に関する事項等)について、著しく事実と異なる表示をしたり、マスターリースを行うことになるオーナーにとって、実際のものよりも有利であると誤解させるような表示等をすることが禁じられました。
誇大広告等に関する留意事項として、ガイドラインでは「家賃保証」のような賃料の減額等が一切ないかのような印象を与える表記や、「利回り〇%」のような利回りの保証がされると誤解させるような表記、オーナー側からの更新拒絶を自由に行えるかのような誤解を与える表記等が挙げられています(留意事項はガイドラインを実際に確認されることをお勧めします)。
また、広告の表示方法として、例えば重要な事項を広告の欄外に小さな文字で表示するような方法も考えられるところですが、表示してあればよいというものではなく、あくまでオーナーになる方にとって誤解のない表示をすることが求められています。騙し討ちのような売り方は通用しないということになります。
サブリース事業者等がオーナーに対して契約締結を勧誘する場合や、契約後の解除を妨げるために、重要な事項を故意に告げなかったり、事実でないことを告げる行為や、一定の迷惑行為等が禁じられました。
契約の勧誘に際する行為については、基本的な趣旨は誇大広告等の場合と同様に、オーナー側の判断を誤らせるようなものが想定されます。解除を妨げるための行為としては、解除の意思を翻させたり断念させるほか、解除期限が過ぎるように仕向ける等の行為がガイドライン上挙げられています。その他、長時間や深夜における勧誘等の迷惑行為も禁止されています。
サブリース事業者が上記の規制を遵守するなどしてオーナーに対して適切な説明を行うことを担保するために、契約前に重要事項説明書を交付することと、契約時に一定の事項を記載した書面を交付することが義務付けられました。
重要事項説明書のひな形はサブリース事業に係る適正な業務のためのガイドラインの末尾に記載されており、標準契約書も国土交通省のサイトで公開されています。
上記のほか、サブリース事業者は、国土交通省令で定めるところにより、その業務・財産の状況を記載した書類(業務状況調書(様式第1号)、貸借対照表、損益計算書またはこれらに代わる書類)を据え置かなければならないこととされました。
以上のようにサブリース事業者にはオーナー側を保護するための規制が課されることになり、違反時の罰則(懲役、罰金、行政処分等)も規定ごとに定められました。新法に反してマスターリース契約が締結された場合、基本的に事案ごとの判断にはなりますが、契約の効力が否定される可能性があり、騙し討ちや強引な契約締結は通用しないと考えて置く必要があります。
反対に、オーナー側にとっては、新法にしっかりと基づく手続がとられたうえでサブリース事業者と契約をした場合は、(これも事案によって結論は変わり得ますが)後から契約内容を誤解していた等として契約の効力を争うことが容易でなくなるおそれもあります。契約手続においては書類の記載を始め契約内容を十分に把握したうえで取引を行うよう注意すべきです。
いずれの立場でも、手続に不安がある場合等は、事前に弁護士に相談されることをお勧めします。
(2021.1.13)
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